春夏秋冬 そばにいて/かのこ
 
春は世界を知る
君のその高らかな響きを
からだいっぱいに吸い込んで
散りいく花に感じながら
それさえもきれいなのだと
こころを知る
きれい

駆け上がり舞い上がり
のびた夏草を千切る日に日に
そうして知らず知らず
積み重ねていった
もっとほしい
もっとほしい
君に投げつけた
もっとほしい

春は夏に秋に影を伸ばす
死ぬのではなく消えるのでもなく
夏に秋に冬に姿を変えて
私に無数の“きれい”を注ぐ
溢れて息がつまっても
まだ注ぐ、注ぎ落とす

秋空によく映える
夕日の頬のなみだ
君がその隣で眺めている
拭わないで
ただひたすら痛むから
拭わないで
ここにいて

春より冬が克明
迫りくるときも若い
君が君であるから
きれい
とてもきれい

その狭間から
どうかたすけて、と

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