虎 (中島敦「山月記」のオマージュとして)/藍静
 
 虎になった
 黄色と黒で 都会のようで
 四本(しほん)の足が 致命的で
 
 神秘と静寂のギリギリに
 透き通るように立ちつくす
 

 虎になった
 爪と牙が 怯えのようで
 叫びの響きが 甘えのようで
 
 獲物を追えば目が眩み
 獲物を食(は)めばこころが眩む
 不連続の いのち のみぞ誇り
 

 虎になった
 脆弱なる魂の美意識で

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