私の手/三州生桑
 

 アナタニハ似テヰマセンネ
 父親似ナノデスネ

私は、サービスカウンターにゐる綺麗なお嬢さんたちと微笑みを交はす。

 ヨカッタ、ヨカッタ・・・

踵(きびす)を返すと、私は無言で立ち去る。

 美しい人よ
 挨拶だけでもした方が良いのではありませんか?
 ほかでもない
 あなたの名誉のためにも
 このままでは・・・

あの男の子は、私の大きな手のことを憶えてゐるだらうか?
否。
私が差し伸べた手のことなど、誰も憶えてはゐまい。
あの男の子も、あなたも。


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