君に会いに行く/青山スイ
 
きっと、知らない町なんだと思う
不器用に建ち並ぶ、高層マンションに隠れている
ありふれた日常だとか、錆付いたマンホールの下から
伝わってくる、救いようのない虚しさだとか
見慣れた信号の色と形でさえ、機能としての
存在でしかないのだと、知り合いのように
迎えてはくれなかった。やはり迷い込んでしまった
きっと、知らない町なんだと思う

足元に伸びる舗道が、コツコツと乾いた音をたてる
通り抜ける冷たい風が、吐き出す白い息をさらっていく
ほとんど何もない僕は、ほとんど何もない荷物を抱え
ほとんど何もない実質を推定しながら歩いている。仮に
君の瞳に映るモノが、素晴らしい世界であるならば
僕の瞳に映るモノも、素晴らしい世界でありたいと
願う。鳥たちが唄っている、言葉よりも優しい歌を
感じるのは、懐かしい鼓動だ。君の生まれた町だ
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