わるい夢/渦巻二三五
 
 わたしはまだ眠ってはいなかった。それとも今 目覚めたところなのか。抗い難く眠い。こうして眠気に耐えているのは恐怖からだろうか。たぶん、なにか物音が鼓膜に届いたのだろう。閉じたまぶたの内側で目を凝らす。だんだんと暗さに慣れてくる。いや、うっすらと光が射してきたのだ。
 まぶたを透かして 戸口に誰かが立っているのが見えた。逆光で影にしか見えないがおそらくは彼だろう。眼球を動かすまぶたの震えを見られてしまっただろうか。やがて、光がすうっと細くなり 部屋はふたたび暗くなった。扉は完全に閉じられた。彼は出ていったのか 入ってきたのか。わからないまま わたしは眠ってしまった。つまり、まぶたの内側で眼球がく
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