帰省/ブライアン
 
東京駅から電車に乗った僕は、電車に乗っている間、ずっと寝ていた。
暖房のよく効いた車内。各駅に止まるたびに開かれるドア。冷たい空気。

終点の駅でホームに降りる。まだまだ、北に向かわなければいけない。
よく晴れた空。澄んだ空気が風で揺れる。僕の肌を切り裂くように摩る。
「どこから来たのだ?」と冷たく風は聞く。
「北から来たのだ」と僕はいう。
「北から逃げたか。」と風。「北はつらい。ここもつらい。お前のようなやせっぽっちに、生きれるすべはない。」と風。
僕は無視をする。

焦点の定まらない遠い空。逃げた。僕は逃げたのか。と自問する。

ホームには自動販売機がひとつある。電車はまだ来ない。

光から逃れるように、人は人を殺す。生き残るためだからと、言葉が震える。恐怖。人に疑問符を打つ。
相対的に命はあるのか。絶対的で、究極的な命があったのではないのか。

駐車場に車が止まる。
ここでなくても平気なのだと、意地を張る。それから、風は僕を無視する。乾いた空が支配する。揺れる空気は僕を避ける。

思惑とは違う方向に進んでいく。
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