ただ、それだけの出来事/ベンジャミン
 
それだけの出来事に日々は満たされていて
それは小さいこともあり大きいこともある

それでも、それだけの出来事は
その人にとっては重大な出来事なのだと
そのことに気づくことはとても難しい



その日は穏やかな冬の夕暮れで
そのまま当たり前のように過ぎてゆく
それだけの一日のはずだった


それは教室の扉を開ける音から始まった
そっけない態度ばかりとっていた子だった
それが何故かいつもとは違って
その子は重苦しい悲しみを漂わせ
そのことに気づいた僕は
その子の袖をつかんで聞いてみた

「どうしたの?」

それだけの一言がふたをあけてしまったように
その
[次のページ]
戻る   Point(3)