ネクロフィリア幻想/朽木 裕
 
時折、死んだように目を伏せる君を
パラドクスを完成させた完璧な死体と思い、
その横顔に恋をした。

僕はネクロフィリアなんだろうか?
自分の皮膚の下におぞましい欲を感じる。

でも君は生きている。
生きていてその目に僕をうつしている。
その瞳があまりにも綺麗だったので
僕は君の目にうつる事を強く強く恥じた。

顔が火照るのがよく分かって、
こんな時こそ目を伏せてくれたら良いのにと思う。

君が綺麗な死体のように目を伏せてくれたら。


―噫、そうだ。


こんなにも簡単なことだったんだ。
…僕は在る兇器を手にした。
兇器を持つ手は狂気も手にしていたのだろう。

こんなにも。
簡単なことだったんだ。

おやすみ 僕の大好きな君。
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