彼のこと/________
 
彼は広げられたおふとんみたいに
飛び込んだわたしをいつでも受け止めてくれる
腕を広げて寝転んだ彼は
だけど、わたしが頼むまで
決してわたしを抱きしめたりはしない
悲しくて
おふとんがぺちゃんこになって
じかに床の固さを感じるまで
一人で飛び込み続けている
ぺちゃんこになったらまた、干すのだ

でもたまに
彼がぺちゃんこになる前にわたしが先にぺちゃんこになったりする

そういうとき、彼は困った顔をして
小さな手で一生懸命わたしの髪を撫でる



言葉の代わりに手のひらから
何かテレパシーを発信しているのかも、と思って
目を閉じて集中してみるけど
ただ潰れたグミの笑い顔が浮かぶだけで
何も分からなくて
何も分からないまま
わたしは、彼の隣にいたいと思う








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