落涙/霜天
 
言葉はどこへ帰れるのだろう。

淡い憧れを乗せて放たれる矢の、狙いを定める君の手の、震え。秋が枯れ、冬に着替えると。いつか未来になっていくあの海沿いの(崖の)カーブの緩やかさが、懐かしくて、縋りたくなる。狙撃するための足場は、扉を開けるたびに揺らめいて。届けるための声が、またひとつ聞こえなくなる。言葉はどこへ帰れるのだろう。いつか、影さえも踏めなくなってしまっている。

影踏み、戻りたくなる景色のための。やがて別れていく道の前で、冬が途絶え、春が来ても。帰るための言葉を探し、触れる手の温もりに、まだ、この身体を抱きしめていたい。中空は色めいて、花びらに道はなぞられて。それでも、誰も帰れない
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