指輪くぐり/渦巻二三五
指の先からくぐります
まずは小指から
つかえてもすぐ引き返せます
引き返しまた
ためす
指輪くぐり
手は裂けているから
指、と呼んで
なぐさめたい
――通り抜けできません
もどれなくなるのはこわくて
あるいはふいに
抜けてしまうのではないかと
くぐりかけた輪につかえたまま
平気なふりでひとに逢う
あら、あなたも――
つかえている
とは言わない
指輪ひとつ
くぐれぬ身の
一日を過ごし
引き抜けば
安堵して
箱にしまう
手
裂けている
初出:二〇〇二年三月一五日 蘭の会月例詩集「指輪」
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