寓話#5/Utakata
 




夢の中にかみさまが出てきて、強く願えば、かつて失ったどんなものだって取り戻せるのだと言う。けれどそう言うかみさまの目の中には今までに失くしてきた無数のものへの想いが酷く哀しげに光っていて、目覚めの後にはかみさま、という響きの妙な柔らかさだけが残る。



酷く太陽の照りつける荒野をひたすら歩いている。細々としたサボテンや潅木に混じって、赤褐色の地面の上には原色のクレヨンが幾本も落ちていて、拾い上げようとする度に太陽の熱ですっかり溶けた蝋の色が掌にべっとりと貼り付く。喉の渇きが刻一刻と激しくなっていくのを感じながら、褐色の荒野をただどこまでも歩いていく。自分の身体だけが
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