寓話#5/Utakata
 



明日あたりに世界は終わるんじゃないかな、と友人が訝しげに呟く。その呟き方がいかにも生真面目なものだから妙に不安になり、部屋の壁に掛けられた時計を見上げる。いくら眺めていても時計の針が全くといっていいほど回転しないので、デジタル表示の時計が欲しいとそのときふと思った。



雪かと思っていたら、降っていたのは砂ほどに細かな白い巻貝の粒だった。夜空をずっと落ちてきたせいか妙にひんやりとしているそれら一つ一つには、ちゃんと小さな入り口と渦を巻いて頂点まで昇っていく緻密な螺旋があり、これは聖夜の奇跡なのか黙示なのかということについて、緑色の口髭を蓄えた男と小一時間ほど話し合った。
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