雨の降る街で/青山スイ
降水確率が
七十パーセントだとか
予報された空から
雨は得意げにやってくる
ビルとビルの隙間を
灰色に染めていく
知らない顔の持ち主が
逃げるように通り過ぎていく
少女は傘も持たずに
コンクリートの
冷たい壁に背を付けて
待っている
というよりむしろ
探している
それは
淋しいから
ではなくて
失いたくないから
具体性に欠けるのは
いつだって同じ
簡単には埋まらないし
徐々に広がっていく
対面のビルの上には
誇らしげな広告の看板
向こう側の世界の住人が
髭剃りを握りしめて
ニコヤカに笑っている
髭剃りはそんなにも
楽しいのだろうか
彼は何かきっかけを
掴んだのだろうか
行き交う人々の声が
重なり合って混ざる
ここは何処なのだろう
少女は確認のために
凍える指の数を
丁寧に数え始める
誰かに声を掛けられても
雨の音で聞こえない
振りをして
泣いていない
振りをする
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