オナンの裔/構造
 
枝がしなって揺れ
扇状地になった
川が日本海に向かって走り
人が住み、田畑を耕し
町をつくった
神はこれを最上置賜地方と呼ばれた

オナンの裔はここに住んだ
漏らしたものが土にへばりついただけの
かれに母も妻もなかった

みずからを慰めつつ
うわごとを地に向かい吐いた

世界についての戯れ事に怒った
神はこの地に突風を吹かせた
人はこれを「清川出し」と恐れ
怒りにふれたかれを迫害した

オナンの裔は徒歩で羽黒山へ向かった
蜂子皇子の故事にならうために

トラックが砂塵を巻き上げ
目と喉を害した
みちゆく人々は罵声を浴びせた
男は嘲り笑い、女は身を隠
[次のページ]
戻る   Point(3)