映写技師/佐野みお
 
映画館のないその街の市民が
映画を観られる唯一の場所「公民館」
そこに私は技師として勤めている

 あなたがレコードを出した
 レコードで聴くその声はあの頃
 そうパブで私とはしゃいでいたときのものより
 低く
 私はレコードの回転数を間違えたのかと思った
 低く
 スタンダードナンバーは私の部屋に流れた

技師として私はテープレコーダーを修理したり
ボイラーの調整をしたりして日々を過ごす
映画会が催される日は
エルモ社の十六ミリ映写機を操作する

 あなたが街を出ていったのは春で
 手紙が届かなくなったのが夏だった
 夏の終わりから私はお金を貯め始め
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