冬が来る日の匂いと笑いと/シホ
秋は深まり沈澱しつつ
冬はしのんで近寄り来つつ
風が吹けば
この季節を経るための
灼けて焦げるようなにおいがする
きっと生き物たちの
魂とはいわずも
肉でも果てるときには
こんなにおいだってするに違いない
この閉じてゆくようなにおい
加速する日の傾き
これらが必ずしも下降でないことを
誰が一番に言い当てられるか
それが肝心なのだけれども
ぼくが言葉を探してるうちにぼくを越え
誰よりもはるかにはっきりと発語する
傾きゆく日や
冬のにおいが
なんと律儀に
めぐりゆく季節か
そのためにぼくらは
いらぬ情けに身をほだされる
いま枯葉の一枚でも舞うならば
なにか思うところがあるような
そんな気がしてしまうのだ
ぼくらの情けは
ぼくに言い当てられることは何もない
しかし
そんなことはもうどうでもいいのだ
冬の訪れる日にふと
灼けて焦げるようなにおいがする
ただそれだけだ
それだけなんだ
灼けてゆくものたちの
明るく乾いた笑い声がきこえる
それだけなんだ
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