明日/________
夜の母校に忍び込んで
安い酒を飲みながら
グラスを窓から落として割る
黒板に一筋の白線
暗闇を引き裂く流れ星
先生、わたし正しい答えなんて、大人になっても分かりませんでした
と呟いたりしない
声に出すなんて悲しすぎると思った
制服を着たわたしは
窓側に顔を向けて
机に頭を乗せて授業を受けた
ときどき眠ったり、泣いたり、先生の話を聞いたりした
眠っている間に
誰かに髪を撫でて欲しいと思ったりした
確かに知っているはずのこの教室はわたしを甘やかしたりしない
部外者は
部外者で
あの頃のほうがずっと大人だった
助けて、明日が来る、
誰の前で泣けばいいの、
わたしはこんな人になりたかったんじゃない
「わたしはこんな人になりたかったんじゃない」
黒板に書いて教室を出る
音楽室を通り過ぎて
グラウンドで寝転んだ
星が見えない
真っ黒
明日が来る匂いがする
大きな声を出して
先生、と泣いた
わたしの呼吸だけが聞こえる
一人
先生からの返事のように、明日が来る
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