銅夜(どうよ)/遊羽
 
銅(あかゞね)の地に影なす禿げ山は峙ち
ひと足もふた足も早く夜を招き入れる
時のか細き尾は見え隠れを続け
遠くより線路の軋む音が届く

終夜の歌は目の届かぬ屋根に落ち
古びた駅は闇の色を纏った列車を迎え入れる
暁星の弧は厚い雲に窶れ
旅客なき列車は銅(あかゞね)の砦へ消えゆく

比類なき恐怖の姿が闇に隠れ
冷たい風はため息を伴って町へと降りる
今日もまた 銅夜 時が痺れる

川縁の錆びたタンクは時を忘れ
いつしか人々は負の財産と呼び始める
明日もまた 銅夜 夢が窶れる

   
2006年11月26日、足尾駅にて。
お題は片野晃司さんからいただきました。



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