静かな日/わら
正午を過ぎ、 電車に乗った。
静かな その車内で、腰かけていると、
ときに、いろんなものを目にすることがある。
その人は、片足がなかった。
駅に着き、扉の開くタイミングを見はからいながら、
そこへ ゆかねばならない。
ゆらぐ足元を、精いっぱいに、その人は降りていった。
しばらくして、隣むかいに、
ある中年のおばさんが座った。
ぼくの母親くらいの年だろうか。
家族のためへと思われる買い物袋を手に持っていた。
彼女は あたまにバンダナのようなものをかぶせて
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