春眠/はらだまさる
桜の木の下に埋められた
古ぼけた笑い声と
黄金色の泥濘に
小さく浮かんだ屍
抜け道と装飾と
美しさのアルルカンが
吐き気のする窓に支配されて
瞼の裏がキラキラしやがる
逆さに吊るされた静寂から
黒い軟体がトロリと零れ
未分化な音階を踏む壊れたピアノが
アンダンテを繰り返す
窓の外では小鳥が
憐憫を啄ばんでいるよ
形骸化された思想の羅列と
オネショで描いたような地図
絶望なんて嘘で夢なんて気障だ
意味なんて地味だし愛なんてないさ
生きる事なんて終わるのだ
死ぬ事なんてイメージだ
ミクロのけつの穴に
木の枝突っ込んで
カフェモカ飲んでる感じだ
JPEGの非可逆圧縮だ
生まれ変われない
俺等は生まれ変われない
侵略と満潮を拒んで
体液が溢れるよ
命なんて震えで
言葉なんて脅えだ
ワタシハワタシ
サクラサク
守るんだ根の深さを
何よりも真剣に
あの巨大な空白の襟元を
掴もうとしている
ないものを掴もうと
必死で手を伸ばしている
ないものを掴もうと
ただ無心で
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