黒の歌/はらだまさる
赤い、地下の
ハードバップ・バーで
奥行きのない顔が
黒に塗り潰されて並んでいる
冷え切った
巨大なJBLからは
バド・パウエルさえも
押さえらない
その指先の
鍵盤も視線も
最も汚らわしいものと
最も美しいものとが、
ぶちぶちと
比較され
間接的に
差別されて
緩やかに
爪をたて
幾多の色彩の
虹が弾け
五線譜のなかに
何度も何度も
シニカルに
塗り重ねられた
黒と、黒に黒を
鉛筆は震え、
日々は
時計の針と
時計の針は
肉体の波打ち際と
夜は
夜の深度を
熱してゆくように
高度な呼吸と、
呼吸の、
光と影が
虚
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