膨れるスモークチーズと際限の無い循環/chitoku
 
くと膨れて、
大きなスモークチーズのようになって、
赤ん坊を押しやって拡がって、
膨らんだ自分しか見えなくなって、
たぶん、私は怒っていたのだ。
それが分かると元に戻って、
大事な赤ん坊を拾い上げた。

いつかそれを私に、という穏やかな声、
私はその声が誰であるかと辺りを見回す。
その人は、赤の他人のような私の妻で、
私が腕に抱いているのは、大事な赤ん坊。
干したての枕のように心地よい、
私が産んだ訳ではないけれど、私の赤ん坊。
他人のような私の妻は、大きな肉の塊を抱えていて、
肉の塊を近くで見て、
スモークチーズのような滑らかな質感に、
焚き火のような香ばしさに、懐かしさを感じる。
大きな肉の塊を食べたい。
そして。

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