雲の切れ間/快晴
 
昭和生まれの私の肩を
平成の雨が容赦なく打つ
汚れや痛みは流されず
ただ剥き出しの私だけがここにいる

昭和という時代の終わりを
私は祖母の墓参りの帰り道
高速道路の車の中で聞いた
まだ幼かった私には
昭和という時代を生きた一人の女の死が
一つの時代の幕切れだった

生まれながらにして
歴史の帳尻合わせを担わされた世代
新たな欲望
新たな悪意
新たな絶望
しかしそんなことよりも私には
この降り続く雨を避(よ)ける術がない

いつか文学も息絶えて 
ロックはもう死んだらしい
三島由紀夫の割腹自殺を
私は文字の上でしか知らない
歴史の再生産は終わりにして
これから何を生み出せるだろう

私はただこの場所に立ちすくみ
遠くの空に雲の切れ間を探してる

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