水族館2.0/10010
う、水さえも。「水に溶ける」とか「氷が溶ける」とは言いますが、月の光は水そのものさえも溶かします。みなさんは知っているでしょうか、水が溶けると、熱く、ちょっとぶよぶよしたジャムのようになることを。
千年硝子は、月の光の衝撃によってひびが入り、砕け始めます。無数の破片が、月の光を反芻し、魚たちの死骸を幾重にも映し出します。その様子はまるでオーロラのようでした。溶け出した水が、千年硝子の外に、どろり、と溢れ出します。魚たちも、なにもかも、一切を押し流し始めます。謎も、夢も、とけていきます。
水族館は月明かりを浴びて壊れる――
後に残ったのは死骸と粘液と暗闇だけの、廃墟でした。月明かりだけが、燦爛と耀いていました。
王様は、自分のおふれの通りになってしまったのを見て、かなしくなりました。
あるいは、かなしみが王様になりました。
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