水族館2.0/10010
 
ないはずの死体が存在しない」という、不可能にも思える出来事なのです。それはきっと、この観測装置の動力源である月の光の不思議な力によるものなのでしょうか、それとも死んだ魚がいたとしても誰も気付かないうちに月の光がそれを水の記憶の中にそっと溶かしてしまうからでしょうか。ほんとうのところは誰にもわかりません。密室のトリックは、密室の中で反響を繰り返すばかりで解かれることもなく、ただ淡々と月明かりの下、千年硝子の内側に永遠の謎を湛えたまま、装置は動き続けています。





或る日、また月が出始める刻になりました。そろそろ、月の出る直前にまた、王様の気の触れたおふれが出されるでしょう。毎夜、
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