時雨に夜/
かのこ
雨を辿り歩く夜
立ち上る想いはもう何処か紛れてしまって
あの日も、あの日も数えてみれば
多くの願いは晴天に、叶っていたのだと知る
そして今は温もりだけ
笑顔も泣き顔も打ち消されて
ひとつの温もりだけ
ただ記憶として降り続く
こんな夜は不安ばかりで
なのに泣くことができない
あまりにリアリティが足りなくて
辿り着けることはないのだろうと思う
恐らくは、次の晴天を見るまで
(それでも歩く、雨音のリズムとともに)
戻る
編
削
Point
(5)