時雨に夜/かのこ
 
雨を辿り歩く夜
立ち上る想いはもう何処か紛れてしまって
あの日も、あの日も数えてみれば
多くの願いは晴天に、叶っていたのだと知る

そして今は温もりだけ
笑顔も泣き顔も打ち消されて
ひとつの温もりだけ
ただ記憶として降り続く

こんな夜は不安ばかりで
なのに泣くことができない
あまりにリアリティが足りなくて
辿り着けることはないのだろうと思う

恐らくは、次の晴天を見るまで

(それでも歩く、雨音のリズムとともに)

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