思春期の門/結城 森士
唯一つ“恥”の木の実があり
僕はそれを食べ“恥”と言うものを知った
自分を知れば知るほど
人間を知れば知るほど
生きていくことさえ恥ずかしく思えて
“恥”は僕を卑小な存在に陥れた
この道を選んだことを後悔し、弱い自分を恥じた
次第に何故自分が此処に居るのかさえ忘れていった
それでも時だけは冷たく過ぎていく
僕の自慢だった綺麗な赤い花は枯れてしまったし
僕が持っていた透明な水はとっくに干上がってしまった
ある日いつもの様に俯いて
門の内側でしゃがみ込んでいたら
世界の全てが白の波に沈んでいった
僕もその白に飲み込まれそうになって、
「死にたくない」と泣きながら助けを
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