その雪原/こしごえ
青くかわいた微笑が枯れている
丸められた角を
階段とする
素数が熱せられながら
現象をのぼっていく
さようならは一度きりであって
すがすがしい光ならば
いつであろうともやわらかく待っているよ、と
とぎれることのない
うたを歌う空が
風に澄んでいる
夢へ漂うと
暗黒の交流の根のうえで灯る
映日果(いちじく)をもぎとり
落葉(らくよう)の空中へ堕ちて
影もなくうつろに蒸散していく粒子の(風体)
青くすみわたった血を虚空に宿し
呼吸の森で無呼吸する
分解されゆく深層の時限
うかつだわ、
わたしが、ほどける。
秋の空は物悲しい
ひとのこころも染まってしまう。
気づけた安心をもって、
映日果をかじれば
青ざめた涙が、
この心臓をうち鳴らす。
冬へ降るのだ。
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