百科事典の使い方/クローバー
 

世界中のすべてのことが書いてあるんだ
きっと、表紙は、虹色フィルムがピカピカと覆ってて文字なんか
関係なく、望むと頭に、意味がパパパーって出てくるに違いないよ
だから、アメリカでもイラクでもパキスタンでも中国でも
同じものを使っていて、百科事典を見るだけで
飢餓の救い方とか、孤児院の建て方とか、ケロイドの治し方とか
砂漠にオアシスを作る方法とか、悲しみの消し方とか、仲直りの仕方とか
なんでも、わかるんだろうなぁ。

きっと、みんな幸せになれるんだ。
ほしいなぁ、百科事典。




今日も百科事典は
日の出と共に起き
日が沈むと共に眠った。

ただ、今夜は、いつもより、多くのくしゃみをした。
僕がうわさしたからに違いない。

百科事典は背表紙を開くとビッと1枚ページを切り取って
ズズズーっと鼻をかんだ。
どうせ、中身を読まないのだ。
自身の使い方を理解していないのだ。


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