花瓶の底、龍の眼/はらだまさる
椿の花が、
吹き零れて、
足踏みしていた、
夜が、
膝を、
抱え込むように、
小さく、
小さく、
うずくまって、
いつの間にか、
シャボンのように、
消えたので、
蛇口を、
捻って、
顔を洗い、
手に掬った、
冷たい、
水を、
飲んでから、
一万、
四千二百、
十八、
九・・・、
と、
ずっと、
数えていた、
気の利かない、
お前が、
薬缶の、
お湯を、
バケツに、
溜める、
みたいに、
俺の、
冷え切った、
足の、
指先から、
丁寧に、
舐めているし、
どうやら、
俺たちは、
秋の、
深い、
懐のな
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