蚕月のエトランゼ/よつやとうじ
 
すこしだけ発光を
ビブラートする
落花の軌跡と

翳翳発ちゆく
空気の群れに
追い詰められた
心臓が一組あります

匂い立つ
夜の坂道に
色づいた
紅の弓なりが
宙を彩る一夜かぎり

風雪の垣根に
絶やされた唇に
精気が滲みます

一方は跳ね燃やされて
不時着した
遠き目論見の
感触だけを放棄して
糸を吐き

一方はいっこうに寒さが
完治しないのを
錆びた金属音の
所為にしました

こうして破綻してゆく
そ振りを続けながら
かかとで小さな
脈をとって
季節からくり抜かれる
ふたつと
なるのでしょう
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