玄冬/かのこ
なぁ
青春とは短く儚いものだったな
桜の色なんて
ああ
暑いな。ここは少し
木々の葉がさやぐような声が
ざわめかしい、朱夏
風の声なんて
ああだけど
底無しに深いと思った
ちょうど白秋が染まりゆくように
砂糖菓子の焦げるような匂い
私の身体に誰か触れた
暗いシーツの中の
触手、触手
燃える木々
あれは桜の木?
それとも銀杏・・・
風に揺られて、遠く
ああ、なぁ
儚いものだったな
今ではとても尊く感じる
愛しく感じる
あの触手よ
私の中で、音も無く
独りで消えていった
光すら吸い込まれて
そして、冬の到来
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