朝とオレンジ/船田 仰
 
呆然とくつばこを見つめてから
オレンジの靴をとりだす
未だにそれはしっかりと
買いかえる気も失せるくらいしっかりとしてる
まいった

嘘の心をもたない少女
そんなのはだれももってないさ、と
唄いながら並木道の上
それはうそのこころじゃないとおもったし
死んだあのひとをみんな見送っていた
ぼくは笑って
さよならするんだ
そして吹けない口笛をふいたつもりになって
得意にさえなって
曲がり角で、ゆらめく
朝をにらんだ

望んでたことじゃないことが
案外にしぶとく
静電気でゆびにまとわりつく塩化ビニルほどにしぶとく
その存在を誇ることも
窓からカラスをながめて
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