蝶を夢む/「ま」の字
開く度に人の貌だった
思いがけぬ このよの摂理(ことわり)
華やかな秘密
どこの世界(黄泉)への 扉なのか
人界の
花弁の上に閉開する ちょうつがいの生物(いきもの)
羽に映じ、流動し、うずく虹
貌
再びみたび
人の表情が ながれ
これは常世の夢
いいや日当たりのよい庭で
花束を傍らの老婆たちは手を拍き
たのしげに土地の歌を謡う
庭のテラスに許された日溜まりを夢みる
あおむいて手垂らし眠る何者かの夢
蝶よ蝶
一月の水涸れた川
川に沿うた遊歩道
風吹いて落ちる
発行をためらわれた不吉の通貨いちまい
(その兌換に関する先天的な障害については
最後まで述べぬのか)
翅
に煮る 陽 すうぷの波紋に透け
貌 の笑い
死出の華札(カード)
遺棄された手鏡
よわい反射 ひかり
に
累代伝えられた
祖型
華やかな 血のいろすきとおる遺伝 の躰 と
遊弋の貌
ああ たちさっていった人の あしもとまで
その足痕は つづいているのです
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