五百円玉/はらだまさる
「お母さんの財布から五百円玉をとったのだぁれ?」
その声に僕は怯えた。
誰かが僕をみてる、黒い大きな吊り目にじぃっとみられている。
僕が小学一年生になったはじめての夏休みだった。
いつものように僕は妹の手をとって
学校の裏手にある行きつけの駄菓子屋さんまで走って行く。
その道のりが僕も妹も大好きだった。
水あめ、メンコ、蛇玉、水風船、銀玉鉄砲・・・
百円玉さえあればそれだけで夕食時まで夢中で楽しめた。
だけどお母さんに百円玉がもらえないときは、
違うことに夢中だったっけ。
クラスで人気の女の子、ドッヂボール、喧嘩、市営プール、
虫取り、基地作り、野球に缶蹴り
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