涙からはじまり永遠のような一瞬で終わる/カンチェルスキス
ので
部屋にいました
簡単に書きます
グレイの背広の男が電柱によじのぼって
恋人からの手紙を読んで涙を流していました
雨が降ってるのが気にならないぐらいの悲しさ
だったのでしょうか
肩を震わせ髪の毛を無用のものにして
泣いていました
背広の布地の切れた部分から白いYシャツがのぞいていました
電柱の下で車が水溜りを次々とひと連なりにしていきます
それからわたしは雨の中飛び立つカラスが
灰色の空に標本みたいに停まったちょうどその永遠のような一瞬を目撃したのです
わたしはカーテンをさっと閉めて
涙からはじまり永遠のような一瞬で終わった
このことを誰かに伝えたいと思ったのですが
白紙の束をぱらぱらめくってると
地球が回ってることが実感できたので
それで十分な気がして
朝まで部屋の蛍光灯をつけっぱなしにして座っていました
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