手袋/茉莉香
手が悴んで 痒くなった
空は闇に包まれていて
家の光はぽっぽと見えては消える
家の前の公園は
しんと光る電灯がひとつだけ
寂しく山の形した滑り台を包む
私はぱりぱりした唇を舌で湿しながら登った
吐く息は 白く一瞬固まる
滑り台と共に私の影はほんのりと存在を映し
そっと真っ赤に膨張した手に白い息を吹く
無邪気な子供の私は お気に入りの母からの手袋を
泥だらけにして 駈けずりまわる
笑いながら息を切らしながら滑り台に登る
お母さん
手袋
あったかかったよ
涙は冷たく頬を伝う
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