観音/ピクルス
雛壇は燃え尽きた
軽い母を背負って
彷徨う脚がつる
ここらで捨てな
と
早口で
母が云う
あの鞭で叩かれて
怯えながら
でも
忠義は誓わなかった
本を抱えて
黒い家を出た
直ぐに掴まって
また鞭を喰らった
黄昏ばかり見ていた
星も月も滲んでた
独りで囁き
独りが頷いて
独りが俯いて
それに慣れて
夢で見る母は
嘘八百
バニラの薫りのエプロン
よく頑張ったねと笑顔
お菓子なんて要らね
褒めて欲しくもない
ただ
鞭は痛いんだ
腫れて膿んで
なんやら
でね
背中の母に
道すがら
咲いてた野花を
手渡した
変だね
いつか絶対
鞭の仕返しを誓った筈
なのに
母は笑ってる
母は泣いてる
また軽くなった
ねぇ
鞭で叩いても
良いんだよ
ねぇ
も少し
歩こうか
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