傘日和/アンテ
 

103号棟アパートの階段を
屋上までのぼる
隠していた鍵でドアを開けると
海からの強い風が
征圧的に音をたてている
絶好の傘日和だ
家並みを見渡すと
陽射しが白く包み込んでいる

落下のイメージが
頭にこびりついて消えない
小石はただ真っ直ぐに落ちる
鳥は羽をはばたかせて
空に舞い上がる
重力に抗う力は
どこから生ずるのだろう
猫は身体をしならせて
着地に備える
人はどうだろう

屋上の縁に立って
手を差し出してみる
指をひらく
空想のタマゴは落下しながら
殻が割れて
中から雛がもがき出て
みるみる成鳥に育つ
羽を広げて
そこで時間切れ
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