そのとき「詩」は私を救わなかった/渦巻二三五
二年前、私は仕事を終えると毎日病院に通っていた。
夫を車椅子にのせ、夜の病院内をさまよった。病院から出ることができないなら、せめて外気にに触れさせてあげたいと思った。
屋上テラスの扉は鍵がかかっていた。
私たち、心中することもできない、と思った。
やがて訓練の甲斐あって夫は自力で車椅子に乗れるようになり、外泊許可も出た。私は自動車教習所へ通い、運転できるようになった。
やっと死に場所をさがしに行ける、と思った。
死にたかったわけではない。
どうやって生きていったら良いのかわからなかった。苦しくて辛くて、もう楽になりたかった。死にたい、と思ったことはなく、ただもう楽にな
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