押入れインディアン砦/銀猫
 
縛り
血止めした左腕
弾丸が突き抜けた帽子には
危機一髪の風穴が開いている

(終わったのだ・・)
(負けなかった・・)

すっかり荒んだ砦の中に
ウエスタンブーツの踵の音が響く

ふうっと銃口の煙を吹き軽く溜息をついて
今日の幸運を神に感謝し
胸で一緒に闘っていた十字架にキスをすると


すると
夕飯だから静かにしなさい!と天からの一喝
西部劇を演じていたキャストたちは
すごすごと現実の顔に戻り
西部劇には不似合に並んだ鯵の干物を
箸でつつき始めた



昔々
今は昔
六甲山の麓
小さなアパートメント
インディアン役は若かった叔父
保安官役は姪っこ


古く狭いアパートメントの2階に
インディアンの砦があった




    ※愛する叔父と傍らの幼い少女のために記す
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