あの娘が両手の親指にだけ指輪を嵌めるのは/Utakata
らじらしい
(酷くしらじらしい訳ではない 本当に少しだけだ いつだって)
例えるなら滑らかなヴェルヴェットの触感
冬は嫌いだと君は言う
溶けた記憶も快感も小さな嘘も
やっぱり重力からは逃れられないね
けれどやっぱり
あの娘は両手の親指にだけに指輪を嵌める
あの娘が両手の親指にだけに指輪を嵌めるのは
あの娘の両手の親指だけが 実は作り物なのではないかと
つんとする冬の匂いを吸い込んで 少しだけ僕はそう思うのだ
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