あの娘が両手の親指にだけ指輪を嵌めるのは/Utakata
あの娘はきまって
自分の両手の親指にだけに指輪を嵌める
自分の両手の親指にだけに指輪を嵌めるのは
自分の両手の親指だけが
実は作り物だからだろうか?
蛋白質の桃色に
透けて張り付く角質と
底に隠れた小さな骨の
組み合わせに過ぎないからなのだろうか?
十一月のある朝
目を覚まして窓の傍へ近寄ったとたんの冬の匂い
鮮やかな白に溶けてしまいそうな群青色のバラード
右手の人差し指と中指の根元近くに揺れる煙は
やっぱり重力からは逃れられないね
微かに伏せた目が捉えた銀色は
細い指の周りで微かに震えていた
蛋白質も角質も小さな骨も
偽者はいつだって少しだけ しらじ
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