鮫薬/
よつやとうじ
つぐみ死ぬ
草むらで
黒いちょうちょを
舞いあげた
あのひ粗末な
ひらひら風
薄暗さの
まっただなかは
ふたりの音で
冷たかったと
つまさきまで
覚えていて
十一月の原形を
留めている
あのひと歯並び
きれいだったよ
わたしは
全霊も約束も
置き去りにして
つんとすねたまま
良薬をひと飲み
つのる不機嫌に
背を向けながら
この世のものとか
上品な生なんかもぜんぶ
蹴飛ばせるように
なっていくのです
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