踊り子よ/佐野みお
 
おまえには赤い照明が似合う
顔に笑みを塗りつけ
何か歌う その歌は
ざわめく客席には届かない

この店はただでさえ暗く
ましてショーの時間ともなれば
隣の客の顔さえわからない
それでいいのだ
みな見つめるのはおまえだけだ

光るドレスをまとい
身をくねらせ
あきらめてきたあれこれを
忘れようとするおまえ
いいのだ それで
私たちも焼けるような酒に
過去を溶かし流そうと
夜毎試み続けているのだから

暮らすために身をさらし
踊り暮らす その先に
何をつかもうとしているのか
とっくに見失ってしまった
おまえ、踊り子よ
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