さみしくて/ロリータ℃。
 


秋の海は生き物の香りがしない
まだ太陽が昇りきらない夜明けの孤独
二人で訪れたこの海には
まるで誂えたように人がいない

冷えた体を温めたいのか
あなたは強くそれでも乱暴ではないたくましさで
私の体を引き寄せる
慣れ親しんだかすかな香水の香りに
私は甘いため息を吐き
その拍子に咥えた煙草が砂に落ちた


あなたが愛を囁いて
低い声は私の心を震動させた
甘く小さなその嘘を
忘れたくなくて耳を塞いだ


その嘘も何もかも
信じてしまえば私はきっと幸福だった
溢れんばかりの祝福だって
きっと神様からもらえていた


けれど私は
ちゃんとわかって
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