化石の子/くあせ@ふじこ
 




世界がすこし傾いた音を
玄関先でブーツを脱ぐ途中
うずくまったまま聞いている


水分が喪失したまつげ
足りない
水分が足りない


私はこのまま穏やかに干からびて
玄関先の化石になろう
乾いていく音と
朽ちていく音


はるか遠い昔
雪山で死んだ人のミイラみたいに
謙虚な物質になりたい
深海魚のように
厳かになりたい



水が欲しい
涙がでない
だって化石は泣かないもの

戻る   Point(3)