砂漠の向こう側/夕凪ここあ
 

離れない

らくだの影で
休む少女
やわらかい砂の丘の
ずっと向こうで
夕日が沈む
橙に染まる
砂漠の夕暮れは
それはそれは
言いようのないほどの
美しさ、で
何もかもを飲み込んでしまう
それでも
少女の瞳は
深い藍色

夜、
泣き出す子どもに
唄を聴かせる少女
喉が渇いて
裏返る声
で口ずさむ
懐かしい
母から聴いた
子守唄

眠りについた後
風は
少女の目指す方向に吹いて
砂が一斉に後を追う
ぜんぶ
少女の寝てる間に、
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