ピラニア/「Y」
 
ふたたび訪れたのは、それから二日後のことだ。その理由を僕は、ただピラニアを見たかったからだ、あの魚が水槽の中で泳いでいるのを眺めていたかったからだ、としか説明することができない。今から思い起こすとなんだか馬鹿みたいな話なのだが、僕はあの日、目が覚めたときから、居ても立ってもいられないような気分になっていた。僕は、あのピラニアの目玉を見たかったし、尾鰭も見たかった。そして、鰓や腹を染めている紅色も、もう一度見てみたかった。
 僕は学校から帰ってくると鞄を玄関先に放り出して庭に飛び出し、自転車に乗った。家から熱帯魚店までの距離は、ニ、三キロといったところだ。だから僕はそれからおよそ十分後には、熱帯魚
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